だから 柱 で ある 俺 が 来 た。 #5 太陽あらば影もある

#1 現代における鬼殺隊の話

だから 柱 で ある 俺 が 来 た

地雷のない方のみ、次ページへお進み下さい。 [newpage] 「あ"ーーーーーっ"!!!! 嫌だぁああ! オレ嫌だよ爺ちゃん!! 行きたくない!!」 「いい加減にせぬか! 腹をくくれ善逸!!」 「ブッ!? 何で!? 何でビンタしたの?! ビンタしたよ!! 痛いよ爺ちゃん!!」 「やっかましいわ!! 男ならシャキっとせェ!」 「鬼がうじゃうじゃいる山に喜んで行くのはよっぽどの変人だと思うので!! オレ入山して3秒で死ぬと思いますので!!!!」 あ"ーーーっ! とオレ、我妻善逸は自他ともに認める汚い高音で拒絶の意を顕にした。 しかし、ちぎれんばかりに首を左右に高速で振れば、爺ちゃんの硬い拳が落とされ、衝撃に耐えられずオレは地面に沈まされた。 だからオレは人間だから鋼と同じように叩いたって強くならないよ!!!! そう文句を叫びながら地団駄を踏む。 もしこの場に兄弟子である獪岳がいたら遠慮なくオレの心臓に日輪刀を突き刺しているだろう。 ……いや、あのクソの事だから蹴鞠の要領でオレの首を蹴り飛ばして殺すか……。 オレと獪岳は超絶が付く程の犬猿の仲なので、アイツが自分の命を守る大事な刀をオレに使うのは勿体ないと考えるのを察した。 ベソベソと顔面に汁という汁を垂れ流しつつ、現実逃避を再開させる。 そうすれば、爺ちゃんの肩に停まっている爺ちゃんの鎹鴉が羽を羽ばたかせながら「キェエエイ!」と叫び始めた。 「アガヅマゼンイツ! アガヅマゼンイツ! アスノ キメツタイセンバツシケン ニ サンカ セヨ! ソコデ ヒタイニ ヤケド ヲ オッタ ショウネン ヲ カンシ、セヨ! ツイデニ ゴジュウネン ソンザイ スル イギョウノオニ ヲ タイジセヨ!!」 「一番怖い事を"ついで"扱いしやがったよ! この烏!!!! てかさ! 何で!? 何でオレなの!? オレ既に入隊済みだし、別の人でも良くない!? 何でまた鬼がいる山に七日間も過ごさなきゃならないわけ!?!?」 そう。 オレは壱の型を修得してすぐに、爺ちゃんに問答無用で縄に括られて選抜試験を受けさせられたのだ。 しかも、オレが人の何倍もビビりな事を知ってるからか、爺ちゃんは説明なしにオレを会場に放り投げやがった。 正直酷くない?? 当然オレは逃げようとしたのだが、張られていた結界のせいで脱走出来ずに強制的に参加する事になったのだ。 当時は恐怖と緊張のあまりに気絶する癖があったので(今はなんとか治したけど、恐怖を誤魔化したり、集中力を高めるために敢えて目は瞑って闘っているが)鬼の記憶は殆どないが、凄く怖かった事は覚えている。 なのに、目の前の烏はもう一度オレに、あの山へ入れと言ってるのだ。 何で?? 本当にありえなくない?? てか、50年以上も生きてる異形の鬼があの山にいただなんて知らなかったんだけど!? 良かった! 遭遇しなくて!!!! でもさ、火傷を負っている野郎の監視はともかく、選抜試験なんだから、その鬼は参加者が倒すべきなんじゃないの?? オレが倒したら意味なくない???? そう訴えてみれば、烏は怒っているかのような雰囲気を纏いながら返答する。 [chapter:【我妻善逸は雷柱である】] 気付けばオレは、本っっ当に不本意だけど鬼殺隊剣士のトップである【柱】の一人に任命されていた。 流石のオレでも、真剣に任務に励んでいる人や、認めたくはないが、ストイックでプライドが富士山級な獪岳にすら申し訳ないと思っている。 以前御館様にも、それを伝えたら、偶然産屋敷に来ていた不死川さんや宇髄さんに「弱い奴が毎回無傷で戻ってこれるわけネーだろ」と頬を左右に引っ張られた。 あぁ……。 思い出したら腹たってきたわ……。 でもオレがビビりで小心者なのは本当なわけで、正直、柱という責任が重すぎたのだ。 それを素直に伝えて、柱への任命を無しにしてもらおうとしたのだが……、 「そうか。 善逸もまだ幼いものね。 仕方ない。 善逸が柱だって全隊員に公表するのは20歳を越えてからにしよう」 ポヤポヤとした空気を纏いながら御館様はそう答えたのである。 いや! そうじゃないんです!! 公表されて目立つのが嫌なんじゃなくて、柱自体が嫌なんですって!! むしろ任務すら行きたくないのに!! 思わずそう叫びそうになったが、すんでのところで「これは善逸と私、そして他の柱だけの秘め事にしようね」と優しい声で言われてしまえば、 反対の意を唱える事は不可能となってしまった。 意思の疎通って難しいね!!(ヤケクソ) そして結局オレが雷柱な事は機密事項となった。 でも爺ちゃんの烏とは今日でお別れだ。 何故なら、任務として参加する選抜試験が終えれば獪岳にもオレが鬼殺隊へこの度入隊したという事で伝わるので、専用の鎹鴉が付く事になったのだ。 どうやら彼は、水柱である冨岡さんの弟弟子なようで、たった今、2体の鬼を水の呼吸を使い、見事退治した。 気配を悟られないように、心の中で拍手を送りながら、オレは今回の任務内容を思い浮かべる。 今回の任務内容は二つある。 1つは異形の鬼の退治。 コイツのせいで、本来であれば柱である冨岡さん以上の実力に成長するであろう逸材が、次々に殺されていっている。 御館様によると、山から解放されていれば、下ではあるが十二鬼月の一人に数えられる力まで蓄えてしまっているらしい。 確かに、2,3人喰った鬼はまだしも、ある程度位のある隊員ですら倒せない相手に入隊すらしていない人間が倒せるわけがない。 だから柱であり、今回の選抜試験参加者とほぼ同世代なオレが紛れこんで倒すように伝えられている。 (全くの不本意ではあるが) そして2つ目。 それは、人間である彼が鬼を連れて行動しているため、彼が一人の人間として信用に足る人物であるか定めるための監視である。 これも人の倍も聴力の良い故に、本質や嘘を見抜けるオレでしか出来ない事と伝えられている。 危険人物と言われていたから、一体どんな奴なんだろうって思っていれば、全くの杞憂であった。 御館様にそれを伝えようと、文に暗号文を書こうとした瞬間だった。 まだ試験が開始されて間もないのに、既に鬼は人を何人も喰っている。 早くこの鬼を倒さなくては、新たな被害者が出てしまう。 そう思って、呼吸を行おうとしたし時だった。 俺の可愛い狐が」 その言葉に、抜きかけていた刀を鞘に戻した。 話を聞く限り、どうやらこの鬼は、彼の師匠と因縁があるらしく10人以上の兄弟子を喰ってきたようだ。 そして鬼が獅子毛の髪と花柄の着物の人物を侮辱する発言をすれば、怒りに支配された彼との戦闘が始まった。 本来であれば、一応柱であり任務を言い渡されたオレも参加しないとならないのだが、彼らの因縁は明らかに"部外者"が参加してはならない問題だ。 ヤバい時まで大人しくするべきと判断して、オレは再び気配を消し始める。 それに、鬼を連れているのであれば、彼はこの先何かと狙われるに違いない。 ならば今ここである程度の力があるのを証明しなければ今後、苦難を乗り越えるのが難しいはずだ。 木に叩き付けられた彼が気絶すれば、心臓がヒヤリとするも、すぐに目を覚まして彼は鬼の攻撃を交わし、懐へ入る。 何故か烏ではなく雀(チュン太郎と命名した)を鎹鴉として付けられたオレは細かい任務内容を理解していなかったので、炭治郎と共に行動出来たのはある意味ラッキーだった。 ビビりなオレは年下である炭治郎に何度も怒られたが、それでも彼は優しい音を奏でいた。 その任務で伊之助とも知り合い、禰豆子ちゃんとも知り合えた。 炭治郎が連れていた鬼は、人としての理性を残した禰豆子ちゃんであると知れば、オレは更に炭治郎という人間を尊敬したし、自分の判断は間違ってなかったと安堵する。 炭治郎と禰豆子ちゃん、伊之助の三人は今ではオレの大事な仲間であり友人だ。 そして、たった今、チュン太郎から産屋敷にて御館様と柱による炭治郎と禰豆子ちゃんの裁判が行われると連絡が届いた。 本来であれば現役の雷柱であるオレも参加しなくてはならないのだが、生憎、蜘男との闘いで負った毒のせいで身体が動かせない上に、信じたい人を信じるが座右の銘であるオレでは公平な判断が出来ないとされ、不参加を命じられている。 でも、それでもオレは炭治郎と禰豆子ちゃんの二人を助けたい。 「ねぇ、アオイちゃん」 「何ですか? 説明は先程も致しましたよね?」 「ううん、ちょっと大事なお願いがあってさ」 蝶屋敷でオレと伊之助の手当てをしてくれているアオイちゃんに頼めば、仕事熱心な彼女は「大事なお願い?」って首を傾げつつ真剣に聞こうとしてくれる。 なのでオレも真面目な顔でお願いを告げた。 「今から【雷柱としてのオレ】の言う内容を、一言違わずに代筆してくれないかな?」 そう伝えれば、アオイちゃんは面をくらった表情を一瞬だけ浮かべるも「分かりました」と、理由も聞かないでお願いをきいてくれた。 今すぐにでも自分達を信じてくれている感謝を冨岡さんに伝えたかったが、それよりも早く、二人の柱に言葉を遮られる。 やはり、二人は鬼である禰豆子を生かす事は反対であると 御館様に訴える。 「確かにそうだね。 人を襲わないという保証が出来ない証明が出来ない」 その言葉に、心臓が嫌な音を鳴らした。 思わず御館様へ視線を向ける。 御館様は目がハッキリ見えていないはずなのに、何故だがオレにも言い聞かせるようにゆっくりと口を動かし始める。 一体何を言われるのか気を引き締めた。 しかし、それは無駄に終えた。 何で今、善逸の名前が出る必要があるのだろうか? その理由が分からず、混乱もあって無言で入れば『はぁああ!?』と他の柱が声を荒あげる。 「どういう事だあの糞ガキ!?」 「御館様! 実際に彼が確かめたとはどういう事ですか!?」 「てか! 善逸は何でここに居ねえ!?」 「善逸くんは現在蝶屋敷にて治療中ですよ」 「ハァアッ!? おい胡蝶! どういう事か説明しやがれ!!!!」 まるで嵐のような騒がしさで柱の人達は善逸についての話題をしており、オレは不安でいっぱいになる。 善逸が治療中というのも凄く心配だが、それ以上に善逸が酷い処罰にあわせられるんじゃないかと恐怖が込み上げる。 だから思わずオレは叫んだ。 「どうして善逸の名前が出るんだ!? 善逸は関係ないだろ!!」 「ァア"!? 関係大ありだから話してんだろうが!!」 「ッグ……!?」 地面に叩きつけられてる頭部が更に押し込まれ、痛みにより悲鳴がもれる。 関係? 一体何の関係があるんだ……? それが分からず、もう一度尋ねようと無理矢理頭を持ち上げようとした時だった。 「チュチュチュ!」 「あー? 何だ、この雀?」 銀髪の男の声に視線を向ければ、そこには善逸の鎹鴉である雀のチュン太郎が御館様の隣に座る白髪の子どもへ文を渡していた。 どうしてチュン太郎がここに……? 本当に訳が分からずにいると、白髪の子どもは文を受け取り「こちらは、我妻善逸様の鎹鴉でございます」と告げる。 鎹鴉が烏ではなく雀なのは、やはり善逸だけなようで、初めて烏以外の鎹を知ったらしい他の柱は「ブっ!!」と笑いを零した。 なんなら、銀髪の柱は過呼吸になる勢いで笑い転げている。 どうかそのまま失神して禰豆子の脅威が一人でも減って頂きたい。 「"オレはこの数日間、竈門炭治郎と竈門禰豆子と共に過ごしましたが、禰豆子ちゃんが怪我を負いながらも理性をなくして人を襲うという事は一切ありませんでした。 任務で禰豆子ちゃんが二人の子どもに預けられた事もありましたが、彼女は襲う意思を見せておりません。 それどころか、他の隊員と一晩同じ部屋で過ごしても何も起こりませんでしたし、言葉は喋れないようですが意思疎通も可能です。 禰豆子ちゃんは確かに鬼ですが、他の鬼とは違い、人間に害をなす事はありえないと判断しました。 何より炭治郎と禰豆子ちゃんから奏でられる"音"は信用に足る心地よいものです。 オレは二人を信じます。 なのでどうか、二人がともにある事をお許しください」 善逸の文が読み終われれば、オレは「ぜ……っいつ……ゥ……!」とボロボロと涙を零して善逸の名前を口にした。 あのさ、お願いだから良い加減離れてくれない?? オレ今治療中なの。 お日様をたっぷり浴びて、蜘化の毒を殺さないといけないの。 分かる????」 「すまない善逸。 もう少しだけ、このままで頼む」 「あのね? お前そう言って、もう何十分経ってると思ってるの?? 離れよ? 良い子だから離れよう??」 裁判と会議が無事に終えたらしい炭治郎と蝶屋敷で再会すれば、何故か知らないが、炭治郎はオレを背後から抱きしめて離さないでいる。 正直野郎に抱きしめられても嬉しくはないのだが、まぁ炭治郎だから良いかと最初は許容していた。 しかし、いつまで経っても炭治郎はオレを離そうとせずに、このやり取りがずっと続いている。 因みに伊之助は短くなったオレの足を枕にして昼寝をしている。 (炭治郎が珍しく三人でくっつきたがって、伊之助の布団をオレの布団とくっ付けた) 蜘化している足がフニフニしているからか、伊之助は珍しく文句を言わずに寝ているため会話はオレと炭治郎のみとなっている。 「善逸、善逸。 ありがとう、オレと禰豆子を信じてくれて……。 本当にありがとう。 やっぱりお前は凄い奴だよ。 オレ、善逸に助けられてばっかだ……」 そう言って炭治郎はグリグリと頭をオレの肩に押し付ける。 うん、それ何回も聞いてるし、オレが勝手にした事だから気にしなくて良いのに……。 炭治郎の頭を撫でてやりたいが、残念ながら蜘化のせいで短くなったオレの腕では届かないので諦める。 「それに善逸の強い奴特有の匂いも、雷柱なら納得だ。 凄いな善逸は。 優しいだけじゃなく強いだなんて流石だよ」 「いや、何度もいうけどオレ強くもなんともないからな? 柱も不本意だし正直任務だって行きたくないよ、オレ。 ビビりだもん」 「善逸は自分を認めなすぎなんだよ。 でも大丈夫。 オレは勿論、善逸を見ている周りの人達が善逸の凄さを知っているから!!」 「もう何なの今日のお前!? 何でこんなビッタリな上、褒め殺してくるわけ!? 怖っ! 長男の包容力怖い!! 助けて伊之助!!」 オレはダメ元で伊之助に助けを求める。 予想とおり、伊之助は鼻ちょうちんを膨らませるだけで起きてはくれなかった。 なんなら、炭治郎の妹である禰豆子ちゃんに助けを求めてみようと一度頭に過ぎったが、残念ながら今は昼間なので速攻却下する。 ……まぁ、仕事の鬼であるアオイちゃんが何も言ってこないならば、炭治郎のこの奇行は、オレの治療の邪魔にはならないのであろう。 そう納得をすれば炭治郎を剥がす事を諦めて、体重を炭治郎に預ける。 炭治郎は姿勢を正してしっかりとオレを固定しだした。 腹回りに回されていた炭治郎の腕に力が入れば、音が僅かに変化したのに気づき「炭治郎?」と声をかけてみる。 そうすれば「善逸……」と炭治郎は言葉を続けた。 「オレ、早く善逸の隣りに立てるくらい強くなってみせるよ」 ポツリ、と声量は小さいが意思の篭った言葉が耳に届いたので、オレは「おう」と答えた。 「何なら禰豆子ちゃんはオレが守るから、炭治郎は早くオレ以上に強くなって、オレを守ってくれよ」 「安心しろ。 そしたら禰豆子もろとも、善逸も守ってみせるさ!」 「さっすが炭治郎!! お前は良い男だよ!!」 「うぃっヒッヒ!」とオレは笑いながら、腹に回されている炭治郎の腕を摩ってやる。 そうすれば「変な笑い方をするな、善逸は!」と炭治郎に笑われたため、思わずその腕を引っぱたいてしまった。 因みに、この体勢をオレの薬を届けに来たアオイちゃんに目撃されれば、彼女は眉間に皺を寄せて何故か酸っぱそうな表情に変化した。 やっぱり、第三者から見ても、男同士でこの距離は近すぎるみたいだった。 蜘化のせいで指がないオレの代わりに炭治郎が薬と水を受け取ったので、当然のように飲ませてもらえば、アオイちゃんのあとから訪れたナホちゃんら三人娘に「キャ〜!!」と黄色い歓声を上げられたので、あえて聞こえなかった事にした。

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#1 現代における鬼殺隊の話

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【完結】 ─計算の果てに何があるか─

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SS投稿掲示板 XXXSS投稿掲示板 No. 耳障りな声で。 泣き止まない声が口元から喚き出るのが五月蝿くてしかたない。 しかもそれが自分の口元からなら尚更だ。 また意味不明な話の出だしだが、普通の日本人だった俺はどうしてだかは知らないが、いつの間にか赤ん坊の体の中にいたのだ。 そして泣き止まない自分の泣き声をただ聞いていた。 これが自分の体ならどうにかできてよさそうなものだが、赤ん坊の体っていうやつはとにかく泣くようにできているらしくて厄介だ。 まず衝動に近い感情が胸を揺さぶって、気がつけば泣いてしまう。 やれやれ、不便な体だぜ。 と大人だった頃のように肩をすくめて見せようにも、それもできない。 今の俺にできるのはせいぜいが指先を少しだけ動かしたり、体をよじったりすることぐらいだからだ。 赤ん坊なだけに、それぐらいしか神経が上手く通っていないらしい。 「あ、あ、……ゼン君、おなか減ったの?」 俺の泣き声をやっと察したのか、母親である女がやってくる。 ゼンというのはここでの俺の名前であるらしい。 この母親には言いたいことは色々あるが、まず愚図すぎた。 行動するには一々つまらないことを考えてからでないと行けないし、分からないことがあるとすぐに子供の前でも情けない表情を見せた。 今も俺の股間を濡らす不快感にさっと気がつくことができないでいるあたり、母親としてどうだろうと思わずにはいられない。 まあ、母乳を出す胸だけは張りがあって乳首もほとんどピンク色をしているので、寛大な俺は許しているのだけれど。 「そ、そっか。 オムツか。 変えなくちゃ。 ちょっと待っててね、ゼン君」 ようやく俺の不快感に思い当たったらしい母親は、そのまま急いで部屋を出た。 はあと出せもしないため息を吐かずにはいられない。 母親の行動はのろますぎて、こっちが代わってやりたいと思うぐらいなのに、この体が動かないのだから苛立ちは募った。 そして少しばかりの時間が流れる間、俺は放置。 オムツの替えぐらい俺の部屋にはなから置いておけと思わないでもない。 ただ、それをあの母親に望むのは無理があるだろうな。 そう思った時だった。 その登場シーンはまるっきり忍者のそれで。 「はい、ゼン君。 お着替えしましょうね」 そしてたどたどしくも俺の足を手に持ってオムツを替える母親の額には、木の葉のマークが刻まれた額当てが嵌められているのだった。 はっきり言ってしまえば、週刊漫画雑誌に連載されている某漫画のそれと寸分違わないデザインで。 ここまで説明すれば誰だって理解できるだろう。 結論として、赤ん坊として俺が生まれたのは、NARUTOの世界だったのだ。 本当にため息をつかずにはいられない。 意味も分からずNARUTOの世界に生まれた俺。 どうしてこんなことになったのかは本当に理解出来ない。 ただ普通に寝て起きたらいきなり赤ん坊だったという、わけもわからない展開に、人生ってのはそういうものだという諦めに似た悟りを開くことしかできなかった。 ただし、混乱するだけっていうのも癪だったから、ある程度の情報は自分でも調べていった。 赤ん坊だったので、枕元で母親が話す断片的な情報からの推測でしかないのだけれど。 まず、俺が生まれた場所は木の葉の里で間違いないらしい。 そして、母親はそこで下忍をやっているダメ忍者だということ。 母親になるくらいの年齢(具体的には十七)だって言うのに、未だ下忍ってのは才能が無いとしか思えない。 そして重要なことに、現在の火影は四代目であるらしい。 三代目の爺さんが火影の役職に就いていないと言う事は、つまり原作が開始された頃よりも過去に俺は生まれたということになる。 凄まじく不味い展開だ。 俺は赤ん坊のまま、ころっと死んでしまうことだって、十分に考えられる。 せっかく生まれたのだから、割礼するよりも先に死んでしまうのは御免こうむりたい。 よくわからん展開だが、この里の女は相当美人が多いから、将来に期待しているというのに。 嫁も作れないうちに死ぬなんて酷すぎる。 そんなことを考えていると悲しく思えてきたので泣いた。 盛大に泣いた。 すると母親がすっ飛んできた。 だが、周りを良く確認していなかったらしく家の柱に頭をぶつけてうずくまっている。 やけに甘い母乳を出す乳が無ければ、本当に子供を辞退したいくらいである。 「大丈夫? ゼン君」 頭を抑えながらも言ってきた母親に、お前が大丈夫かと猛烈に言い返したい衝動が生まれたが、我慢する。 どうせ言葉はまだ口に出来ないし、言おうとしたら意味が分からなくて母親が無駄におろおろするだけだからだ。 面倒なのはマジでごめん。 しょうがないので、暇つぶしに胸をしゃぶってみることにした。 腹が減ったと泣いて主張する。 母親は最近になってようやく泣き方の違いに気がついてきたのか、珍しく一発で俺が母乳を飲みたがっていることを察した。 分かり易いように、腹が減っているときはおぎゃーおぎゃーと長い間隔で、オムツが汚れたときはおぎゃおぎゃおぎゃと短い間隔で泣き続けていたというのに、それに気がつくのが半年かかるあたり母親のダメっぷりは際立っていると思う。 「はい、お腹が減ってるんだね」 ぽろんと形のいいおっぱいをさらけ出して、俺の口元へと寄せる。 ダメ忍者であろうとも、忍を名乗るだけあってその体は鍛えられていて張りがあるので、この乳にはむしゃぶりがいがある。 生えかけの歯で乳首を甘噛みし、舌を這わせると、母親はんんっと甘い声を出した。 感度がいいらしく母親はいつも授乳する際に頬を赤く上気させてしまうのだ。 このあたりは非常に合格点を上げたい。 普通ならふざけた赤ん坊だと考えるべきところなのに、このダメ忍の母親は間抜けだからそれを疑問に思っていないところがナイスすぎる。 どうやら自分が恥ずかしい性癖を持っているだけだと勘違いしているようだ。 俺にとってはそちらのほうが都合がいいので、是非ともこのままでいてもらいたいものだ。 そう考えると、普段の母親のどじっぷりも笑って許せるような気がするから不思議である。 俺は更に舌に緩急をつけて、母親の乳首付近を重点的に攻めた。 びくっと一瞬だけ震えた母親の体は次第に火照り始め、やがて大きく震え始めた。 イッたらしい。 ほうと甘いため息を吐いて、とろんとした目で俺を見る。 俺は一仕事が終わった充足感から、今度は真面目に母乳を吸い始めた。 とろとろと甘い母乳が口の中に広がる。 普通、母乳ってのは不味いと相場が決まっているはずなのに、かなり美味しく感じるのは俺が赤ん坊だからなのだろうか。 理由は定かではない。 だが、そんなことはかなりどうでもいいので、俺は再び母親の胸に舌を這わせた。 「ん、あ、ああっ」 どうせだから右の胸だけじゃなくて左の胸にも噛み跡をつけないと面白くないからな。 そんなこんなで、意味もなくNARUTOの世界に生まれてから五年がたった。 毎日、母親にセクハラして飯食って寝るという赤ん坊ライフを満喫していた俺は立派なクソ餓鬼に成長し、元気に家の周りを駆け回っている。 というか、未だにこの世界の情報を集めている。 死にたくないから、本気で頑張るしかないためだ。 本当ならかったるくてやってられないが、俺の薔薇色の将来のためにも努力は怠れない。 元・大人の意地で三歳までにこの世界の文字を学習し終えた俺は、それから定期的に忍者アカデミーの生徒でもないくせに図書館に侵入したりして、色々と勉強していた。 不法侵入だからつまみ出されるかと最初は思っていたが、逆に校長である三代目火影の爺さんの目に留まり 「四歳児のくせに学問の勉強を始めるとはあっぱれ」というお墨付きを頂いたので、それからは自由に蔵書を借りたり読むことができるように取り図らわれた。 あの爺さん、中々豪快なところがあって好ましい性格をしているようだ。 「また来てるのか。 飽きないな、お前」 「何だ。 ながれ兄ちゃんじゃん。 わかる?」 「相変わらず可愛げのないガキだなあ……」 机の上に本を広げて、こちらの世界独特のチャクラや忍術といった摩訶不思議パワーについて学習・もしくは簡略化してレポートにまとめている俺を身ながら、アカデミーの生徒であるながれが声をかけてきた。 この男、本質的な善人であるらしくて、小さいくせに図書館くんだりまでやってきている俺を心配してかよく声をかけてくる。 顔はヤクザみたいに怖いが、中身はのほほんとしていて、嫌いじゃない。 ただ本編では名前を聞いたことがないので、そんな重要なキャラクターじゃないんだろう。 「そりゃあ今をときめくクソ餓鬼ですから」 俺はそう言い終えると同時に、レポートをまとめ終えたので、バッグの中に紙やら本やらを仕舞いこんだ。 そして席を立ち、借りていた本を元の場所へと戻す。 「あ、おい、もう帰るのかよ。 もしかしてガキとか言われて拗ねたのか?」 「まさか。 ながれ兄ちゃんだって俺がそんな可愛い性格してないって知ってるだろ? 今日の勉強は終わり。 俺、今から家帰って飯の準備しないといけないんだ。 うち、母さんが抜けてるから台所に立たせたくないんだよね」 「ああ、そういうことな。 お前の母親って、おっちょこちょいだったもんな」 哀れなことにうちの母親の間抜け加減はアカデミーの生徒にも知れ渡っているらしい。 一体どれほどの武勇伝を打ち立てたのか、昔全てを聞き出してみようと粘ったのだが、聞いてるうちに一日が終了した時点で頭が痛くなってきたので、それからは深く考えないようにしている。 ……それにしてもあの母親、よく今まで生きてこれたよなあ。 「そゆこと。 じゃね」 しゅたっと右手だけを上げて軽い挨拶をすると、俺はそのまま木の葉瞬身の術で図書館の外へと出た。 そのまま並び立つ家屋の屋根を跳躍していって、家へと帰る。 家へと帰ると、何故か焦げた鼻につく匂いがした。 何か物が燃える様な。 (何だ……? これ。 もしかして敵襲か?) 今は忍界大戦が終わったばかりの時期で、治安はいいとはお世辞にも言えない。 もしかしたら他国の忍が何らかの破壊工作を木の葉の里で行う可能性もないではない。 俺は体を緊張させ、唯一現在使える攻撃用の忍術である火遁の術の印を組みながら、すえた煙の臭いのする方向へと向かっていった。 そして台所へとたどり着き、見た。 恐らく俺から拳骨を落とされるのを警戒しているのだろう。 煙をコレでもかと出す鉄鍋に濡らした台拭きをかけた後に俺は、鬼ではないので無防備な額にでこピンを食らわせるだけですませてやった。 チャクラで割かし強化したきっつい奴を。 「いたっ! お母さん、痛いよっ?」 「痛いじゃないだろ? 俺、危ないから台所には立つなって言ったよな? 覚えてなかったわけ? それともそんなことも覚えれないわけ?」 抗議する母親の声を無視して、睨みつける。 すると母親はすすっと気まずそうに目を逸らした。 まるで子供の様な仕草に、何故か子供の俺のほうが大人のように逸らした顔ごと両手で掴んでこちらへとむけさせた。 むぎゅうと割かし綺麗な母親の顔が横に潰れる。 「もいっかい聞くけど、俺、台所には立つなって言ったよね?」 じろりと睨みつけながらそう言うと、母親は露骨に慌て出した。 表情から、そのことを覚えていたと言う事が丸分かりである。 どうやらこのドジ母忍者は、火災が危ないから台所に出入り禁止と俺が言いつけた事を覚えていてなお、この台所へと入り込み、あまつさえ火災を起こす一歩手前までいってしまったらしい。 しかも何故か泣き出した。 手が涙に濡れて慌てて両手を離す。 「うわっ、何だよ。 何でこんなに簡単に泣くかな!」 「だって、だって、わたしだってゼン君に料理作りたいし」 「だからそれは火事にならないように安全に料理ができるようになったら、それか俺の監視下でならいいって言ってるだろ?」 「そんなの何時になるか分からないよ。 それにゼン君、最近は全然わたしに構わせてくれないんだもん」 「……構わせてくれないだもんって。 けどさ、母さんが教えれることって、ほとんど俺、教えてもらったと思うんだけど。 逆に聞くと、母さんって今の俺の何を構えるわけ?」 その言葉が致命傷になったのか、ぐずっていた母親はぴぎゃーと泣き始めた。 まあ気持ちは分からなくも無い。 俺が赤ん坊の頃、ドジなくせに頑張って仕事を終えた後も、母さんは疲れているのに楽しそうに俺の世話を焼いていた。 それが何度かのドジで俺を殺しかけたことがあったにしても。 そしてそれから俺が成長した時も、今度は言葉を教えたり、読み書きを教えたりと本当に生き生きしながら俺を構っていた。 幾度、俺からセクハラを受けようとも天然の間抜けさで気づくことなく。 どれだけ疲れていても、怪我をしていても、母親は本当に楽しそうに笑いながら俺に色んな自分が知っていることを教えようとしたものだ。 多分、人に何かを教える、伝えるということに生き甲斐を見出す人種だったのだろう。 だが、そうこうしているうちに悲劇が起こった。 恐らくは母の人生における絶頂期。 俺に忍術やチャクラを教えている頃、ふとした問題が起こった。 火遁の術、木の葉瞬身の術、分身の術、変わり身の術というベーシックな四つの術を教え終わった後に、母は気がついてしまったのだ。 そして悲劇を助長したのは俺の異様な成長速度だった。 体は子供、中身は大人という某バーロー探偵のような反則技をもって生まれてきた俺は、当たり前だが物覚えが良かった。 何年も落第してやっと下忍になった母の何十倍も速いスピードで忍術を学習していく。 鷹を生んでしまったトンビの悲哀とでも言うべきか、自分の子供に物を教える事を楽しみにしていた母親は、いつしかその才能の無さから、何一つ子供に教えることができないようになってしまっていたのだった。 本当に涙なくしては語れない物語である。 何となく気まずい。 普段いいようにセクハラして弄んでいるだけに、罪悪感が、湧く。 しかしこの女、こんな全力で泣けるなんて本当に二十二歳なんだろうか? 疑問も、生じる。 「……ああ、もう。 悪かったって。 俺が全部悪かった」 おざなりに謝っても母は泣き止まない。 相変わらずにぴぎゃーぴぎゃーと泣いている。 仕方が無いから、面倒だけどこの母親をなだめることにした。 以前から俺は、頭の悪い女を騙すのは得意だったので上手くいくだろう。 泣いた母親の前髪を払った後に、流れる涙を指で拭く。 「ほら、本当に泣くなよ。 母さんが泣くの、嫌なんだからさ、俺」 そのまま座り込む母に抱きついた。 本心は汚れている俺だが、子供のように振舞ってそのでかい胸に抱きつく。 母親はぐずっと鼻を啜った。 子供っぽくて脱力しそうになるのを、笑顔で耐える。 「……それ本当?」 「ああ、本当だって。 俺達たったふたりの家族だろう?」 たった二人の家族。 父親はどうやらいないらしく、今まで見たことが無い。 それに親戚も遠縁がいるだけで、しかもそいつらは無能な母親を毛嫌いしているので親交は無い。 家を訪ねる人間も、ほとんどいない。 実際に俺と母親はたった二人の家族だった。 そのことに思い至ったのか、母親が、ぽろぽろと泣くのを止める。 「だからさ、そんなに泣かないでくれよ。 たった一人の家族にそんなに泣かれたら、俺、どうしていいか分からないよ」 「……ん、そうだよね」 ずずっと母親は最後に鼻をすすってなくのを止めた。 マジ子供過ぎて趣味じゃないはずなんだが、付き合いが長いせいかこの母親が笑うと何となく気が楽になる。 俺もガキになって中身が少し変わってしまったらしい。 「そうそう。 俺さ、母さんがそうして笑ってくれてるだけでいいんだから」 更に力を込めてぎゅっと抱きつく。 すると母親も感極まったのか逆に俺を抱きしめてきた。 目の前がでかいおっぱいに包まれて嬉しいやら圧力がきついやら。 「ん、分かった、頑張る。 泣くの止めるね」 「そそ。 体だけは一人前の母親の体が無防備に寝転がっていたので、一瞬だけよしもう犯そうと考えたが、俺の物はまだ勃たないのでそれは断念しておいた。 仕方が無かったので、そのまま母親と一緒になって子供みたいに寝る。 さすがにマジ寝する母親を起こすのは忍びなかったので、目の前のでかい乳を揉みたいという衝動を俺は耐えた。

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